原発に関する危機的状況とSF

現在の非常に嫌な状況、何かで読んだのと似てきているなあ、と思ってたのだけど、ふと思い当たった。

藤子・F・不二雄のSF短編
「箱舟はいっぱい」
「大予言」
「ある日・・・」

それぞれ、以下に収録されている。

【箱舟はいっぱい】
彗星が衝突することが分かり、一部の人のみがロケットで脱出することが秘密裏に進められる。
一般には本当の情報は報道されない。
事情を知る人物が生放送中のテレビに割り込んで暴露するが、「不安に陥れてお金をだまし取る詐欺集団」として逮捕が大々的に報じられる。
これで大衆はころっと安心してしまう。
・・・人は、信じたいものを信じるものです。
程度の差こそあれ、ほぼ同じことが現実に起こってはいないだろうか?
特に、情報の操作に関しては本当に似たような雰囲気を感じる。


【大予言】
有名な予言者が、すっかりノイローゼになってしまった。
何を予知したのか…。
訪ねた友人が見せられたのは、新聞の切り抜き。
「エネルギー危機 複合汚染 直下型大地震 人口爆発 核拡散・・・」
拍子抜けしたような顔を見て、予言者は言う。

「自分たちの滅亡を予言されて。
平気な顔をしていられるみんながこわい!

有効な対策もないくせに
さわごうとも
わめこうともしない世界人類が
こわい!!」

・・・まさにその通りです。差し迫った危険が、本当にあるにもかかわらず、平気な顔をして日常生活を送る人びと。
「核爆弾」の部分を「原発事故」に置き換えれば、藤子・F・不二雄氏の他の作品も、かなり状況が一致してくるようなものがあった気がする。



【ある日・・・】
それぞれ自主制作の映画を持ち寄っての上映会。
いくつかの作品が上映されるが、
「くだらない、問題意識のかけらもない」と一蹴する男。
「これはですね、現代の我々がおかれている状況、戦慄すべき状況をズバリ描いた映画です。」
と言って上映を始めたその男の作品は、単なる日常の生活風景。そして、突然“プツン”と終わる。
「どんな難解な作品を見せられるかと思ったら」と笑う観客。
「わかりませんか、ある日突然・・・核戦争が始まって一瞬にして小市民の生活が消滅したという結末です。」
「唐突すぎる」「伏線もないし・・・」「説得力無いね」
しかし彼は言う。
「“ある日”は“唐突”にやってくる。
“伏線”など張る暇もなく、“説得力”のある破壊なんてあるものか
“ある日”がいつくるか・・・今日にも・・・」
そしてこの漫画は、“プツン”と終わる。

・・・これも、核戦争を原発事故に置き換えるだけで、とても良く似た状況がおきている。
福島原発周辺では強制避難が続いている。昨日までの日常生活を送っていた地域に、ある日を堺に入ることすら出来なくなる。
こんな状況になる可能性があることを、本当に現実的に理解していた人がいくらいるだろうか。


なんというか、危機的状況に置かれたときの日本人の行動というか、楽観的なところを、藤子・F・不二雄先生はよく見ぬいておられたのだな、と感心する。