「クラインの壷」岡嶋二人 (1989)

クラインの壺 (新潮文庫)

クラインの壺 (新潮文庫)

何か前にも読んだような気がしたのだけど、後輩のT村君が持っていたので借りてみた。
…途中から、(真相(?)が明らかになってくる辺りから)ああ、やっぱ読んだことあるなあ、と思ったけど、一気に読んでしまった。

攻殻機動隊」や、「マトリックス」など、似たような要素を持つ物語は近年多いけれど、
冒頭の話への持っていき方、内か外か分からない、という、ループ感が絶妙です。
このストーリーに対しての、タイトルの付け方も、素晴らしいと思う。

この作品を知ったきっかけは、元はといえば、大昔にNHKでドラマ化されていたのを見たことなんだけど、
ちゃんと覚えているのは雰囲気と、車が実は走行していなかったことを目の当たりにする場面だけ。
それでも、“クラインの壷”とか“イプシロン・プロジェクト”というキーワードはずいぶん印象に残っている。
(仮想世界がどのように映像化されていたかは全然覚えてない…f(--;;)


体全身の感覚をシミュレートして、現実と見分けられない程まで持っていく、というのはとても無理
だろうけど、部分的にだったらかなり現実性はある。
だけど、リアクションとか(特に人間の反応・会話なんかを)再現するのはさすがに無理があるだろうなあ。
(ちなみにこの物語に出てくる「KL-2」に入力されたデータ量は“テラバイト級”だなんて話している
シーンがあるけれど、…う〜む、その程度の容量で、街丸ごとを再現するなんて無理だろ。)

…なんか、何回も同じ事を書いているような気がしてきた。
物語としての完成度は大変高いです。


そして、最後の解説を、新井素子さんが書いていたのにはびっくり。
こんなところでお目にかかるとは。